■ HIDランプについて

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HIDランプの特長・構造

●HIDランプの特長
HIDランプとは、High Intensity Discharged Lamp の頭文字からつけられた呼称で、高輝度放電灯とも呼ばれ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプの総称です。
・ランプ1灯あたりの光束が大きく、大規模空間の照明に適しています。
・電球やハロゲン電球に比べ、発光効率に優れているため導入施設の省エネルギー化が図れます。
・長寿命のため,ランニングコスト、メンテナンスコストを軽減できます。
・効率重視から演色性重視のものまで、様様なランプバリエーションがあります。
HIDランプの構造
HIDランプは、種類により封入物や構成材料が違いますが,基本構造、原理はほぼ同一です。

硬質ガラス製のA発光管と、その発光管を支えながら電気を供給する。
B金属部材が収容されています。発光管の両側には、放電を発生させるためのC電極を装着、内部には発光物質としての水銀とアルゴンガスが封入されています。
外管の中に封入された窒素ガスは、ランプ点灯中の発光管の高温化に伴う金属部品の酸化を防ぎます。
そして発光管内の両極管で発生する放電の作用により水銀原子が発光する仕組みです。
メタルハライドランプでは、発光物質として水銀のほかにナトリウム(Na)やスカンジウム(Sc)などの金属ハロゲン化物質を封入し、それらの金属の広範囲にわたるスペクトルを利用します。
高圧ナトリウムランプでは、発光物質として、ナトリウムを封入し発光管には石英ガラスの代わりに、高圧ナトリウム蒸気に耐える投光性アルミナセラックスを採用しています。

HIDランプの発光原理
●基本原理は、@電極から放出されるA電子が、反対側の極へひかれ移動する過程でB水銀原子と衝突し、その水銀原子がC光を放出する仕組みで蛍光ランプと同様です。
しかし蛍光ランプの場合と比べて、点灯中の水銀原子の密度、温度の上昇により人間の目に見える波長の光を放射します。
このように発光管内の高温化が必要なHIDランプでは、スイッチを入れてから高温状態で安定して発光するまで通常数分を要し、消灯直後でも、発光管がもとの温度に戻り、放電を開始するまで再点灯しません。
HIDランプの点灯
●HIDランプを点灯するには、蛍光ランプと同様、安定器が必要ですが、フィラメントを内蔵した水銀ランプ(チョークレス水銀ランプ)には安定器は不要です。

右に,HIDランプの点灯回路の代表例を示します。
放電を開始するにはいくつかの方式がありますが、そのひとつとして図1に補助電極を使用する方式を示します。
この場合,通電と同時に主電極と補助電極の間に発生する微弱な放電が引き金となり主電極間の主放電を引き起こします。これは,主に水銀ランプに採用されている方式です。
この他に、補助電極の取り付けが困難な場合や効果が十分得られな異場合は、高圧の瞬間的な電流(パルス)を主電極間または、主補助極間に流す方式があります。

パルス発生装置はランプまたは安定器に内蔵され、ランプに内蔵されるタイプには、点灯管の他に、始動バイメタルとフィラメントから構成される始動ユニット(図2)の場合などがあります。

これは、メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプに採用されている方式です。
HIDランプの特性
●ランプ効率(1Wあたりの光束)
効率が一番高いのは、高圧ナトリウムランプで、次いでメタルハライドランプ、水銀ランプの順になります。
水銀ランプを1とすると、高圧ナトリウムランプは約2.4倍、メタルハライドランプは約1.4倍になります。
なお、演色性を改善した高圧ナトリウムランプでは、一般形高圧ナトリウムランプより効率は低くなります。また取り扱いが簡単な安定器不要の水銀ランプ(チョークレス水銀ランプ)の効率も一般形水銀ランプより低くなります。

●色温度(光色)と演色性

ランプの使用目的によって様様な光色が用意されています。水銀ランプ(蛍光水銀ランプ)は3900kでピンクがかった白色、メタルハライドランプ(ネオアークビーム)は3500Kで温白色、高圧ナトリウムランプ(ネオルックス)は2100Kのゴールデンホワイトで温かみのある光色、高演色形高圧ナトリウムランプ(ネオカラー)は2500Kと白熱電球に近い光色です。
また、演色性の点でもっとも優れているのはメタルハライドランプです。高圧なナトリウムランプの一般形はメタルハライドランプに比べると劣ります。ただし,高演色系や演色改善形のように演色性を改善した高圧ナトリウムランプもあります。
●残存率と光束の変化
HIDランプは安定して点灯しなくなるまでの時間を寿命とし、「定格寿命」とは多数のランプを規定の使用条件下で試験点灯(5.5時間点灯し,0.5時間消灯する連続繰り返し試験)した場合の平均的な寿命時間を言います。そして,HIDランプの残存率曲線は図1のようになります。(a)高圧ナトリウムランプ、(b)水銀ランプの定格寿命は平均12,000時間と長いのが特長です。(c)メタルハライドランプはそれに比べてやや短く、9,000時間です。(HL−ネオハライド 2・400wは、12,000時間です。)
また、点灯中の明るさ(光束)低下の割合は高圧ナトリウムランプ、(b)水銀ランプの定格寿命は平均12,000時間と長いのが特長です。
また、点灯中の明るさ(光束)低下の割合は高圧ナトリウムランプが一番小さく、つづいて水銀ランプ、メタルハライドランプの順になります。
メタルハライドランプの場合には、演色性や効率を高めるために金属ハロゲン化物の放電を利用しているので、残存率や光束維持率はひくくなっていますが、演色性と効率が優れているという特長に加えて、水銀ランプ用安定器で点灯できるという経済性も兼ね備えています。
こうしたランプの特長をふまえて、照明の目的や場所等の使用条件に合わせたランプの使い方をおすすめします。
●点灯方向特性
水銀ランプと高圧ナトリウムランプは、点灯方向は任意ですが、メタルハライドランプには点灯方向を指定してあるものがあります。また、メタルハライドランプは点灯角度により、拘束が多少変化します。
●周囲温度特性
HIDランプは、蛍光ランプに比べて、周囲温度によって、明るさは影響を受けにくくなってます。点灯については、温度が下がると水銀ランプ、メタルハライドランプではやや点灯しにくくなります。
●始動・再始動時間
高温を必要とするHIDランプの特性上、電源スイッチを入れてから明るさが安定するまで4〜8分ほどかかります。また、消灯後直ちに電源スイッチを入れてから再び点灯するまでに、5〜15分程度必要です。
なお、、器具内にランプを入れた場合,再始動時間が長くなることがあります。
●調光
水銀ランプと高圧ナトリウムランプには、調光用安定器を使って明るさを約50%まで調節できるものがあります。しかし、メタルハライドランプの場合,金属蒸気の蒸発温度が高いため,出力を下げて調光することはできません。

参考資料:東芝LAMPS GENERAL CATALOGUE 2001 HIDランプ技術解説より抜粋



アイセルフバラスト水銀ランプの動作原理
200V用と100V用では若干原理が異なります。

●200V用/電源を入れるとバラストフィラメントを通じて発光管内の主電極と補助電極との間で局部的な放電を開始。
直ちに二つの主電極間の主放電に移行します。同時にバラストフィラメントが熱せられて白熱光を発し、
発光管の水銀蒸気圧上昇にともなって増大するランプ電流を制御しながら安定した放電状態に移ります。

●100V用/水銀ランプは200Vの電圧が印加されないと放電が開始されませんので、片方の主電極を予熱するための予熱フィラメントを発光管内に、
主放電に移行するためのバイメタルスイッチを発光管と並列に設けました。
電源投入後はバイメタルスイッチは 閉じていますのでバラストフィラメントを通じて発光管内の予熱フィラメントが加熱さ れ、温度がある程度上昇すると
バイメタルスイッチが開き、主電極の放電に移行します。以後は200V用と同様です。※100V用の100W、160Wは予熱フィラメントを両側に設けています。

水銀ランプの動作原理
  電源のスイッチを入れるとチョークコイルを通じて二つの主電極に電圧が印加されますが、
この状態で はランプは点灯せず、まず主電極(a)と補助電極(c)との間で局部的な放電を開始。

この放電によってアルゴンガスがイオン化し、主電極(a)〜(b)間の放電に移行します。

さらに放電による熱の発生によって 発光管内の水銀が蒸発し時間の経過とともに蒸気圧が上昇。

ランプの始動直後は発光管温度が低く、波長の短い紫外放射が大部分を占めるため発光は
弱いのですが、数分後には発光管温度が上昇して、ランプ特性が安定した高圧放電となります。

アイ水銀ランプ
●ランプは適合する器具・安定器と組合せてご使用ください。
●点灯中のランプに雨や水滴がかかるとガラス球が破損するおそれがありますので、屋外で使用 するときは必ず屋外用器具でご使用ください。
●反射形の水銀ランプは屋外使用ができますが、防水形の適合ホルダをご使用ください。なお防水形の適合ホルダ以外でご使用の際は、
  屋内、屋外に関わらず点灯中のランプに雨や水滴がか かるとガラス球が破損するおそれがありますのでご注意ください。
●反射形の水銀ランプをアイランプホルダと組合せて使用される場合、口金の緩み・パッキンの経年変化によるホルダ内への雨水浸入のため
  ガラスが破損し落下するおそれがあります。落下による事故を未然に防ぐため、器物や人身に影響を及ぼすと思われる場所の照明(看板照明等)に
  ご使用の際には、必ず適合ガードを取付けてください。
●屋外裸点灯のできるランプはR形水銀ランプ、ボール形水銀ランプ(HGF40Xを除く)、HF80X(W)〜HF200X、HF300XおよびHF250X(W)−H、
  HF300X(W)−Hが使用できます。(反射形、ボール形は点灯方向自由、その他は鉛直点灯に限ります。)
●周囲温度は−5〜+40度の範囲でご使用ください。なお、寒冷地用水銀ランプKH(F)は−30度まで使用できます。
●安定するまでの時間は通常3〜6分ですが、二次短絡電流の小さい安定器の使用や寒冷、強風などのもとではこれよりやや長くなることがあります。
●再始動時間は約10分を要しますが、器具の構造によっては10分以上要することがあります。
●5%以上の急激な電圧の降下があるときは、ランプ立消えが起こることがあります。
●調光形のランプを使用される場合は形式の末尾に−Dを付けてご注文ください。(例: HF100X-D、HF1000X-D等)
●照明器具の前面ガラスやランプの外球が破損した場合には、そのまま点灯することは絶対避けてください。紫外放射による目や皮膚の障害や、
  破損したガラスが落下するおそれがあり、大 変危険です。
●ランプの交換や照明器具の清掃の際には、必ず電源を切り、ランプが冷えてから作業をしてください。点灯中、および消灯直後のランプは高温のため
  ヤケドの危険があります。

参考資料:岩崎 2007-2008 イワサキ ランプカタログ より抜粋